食べる未来、食べない未来。
食肉文化を次世代へ。
日本の養豚業において昨今、飼料高騰や人手・後継者不足を原因とした持続可能性が問題になっています。2000年11,700軒あった国内養豚農家数は、2022年時点で3,590軒。実に70%の減少となっています。
また、タンパク質危機など世界規模での食料問題や、畜産の環境負荷も大きな課題となっています。
今後、ガソリン車がEVに代替されていく流れと同様、リアルな肉から環境負荷の低い培養肉に代替していく可能性があります。
私達は「本物の肉の美味しさ・食べる喜びの価値を尊重し、本当に美味しい豚肉をいただく食文化を次世代へ繋げていきたい」という強い思から、養豚業界へのDX提供を通じて、生産性向上と環境負荷低減を目指してきました。
今回、私たちは全国各地の養豚農家とお客様をダイレクトに繋ぎ、その価値を伝え、そこで生産される豚肉の美味しさという価値を高め、お客様にお届けするという取り組みに挑戦します。
登場するのは、新潟県魚沼の幻のブランド豚「鬼の宝ポーク」と、ドイツ伝統製法・完全無添加のドイツ人職人「バルドゥーン」。
「鬼や福ふく」が生産する、香り高く旨味のある豚肉。
そして、まるでお肉そのものを食べていると思えるような、バルドゥーンの技術とオリジナルレシピによる「メインディッシュとしていただける、肉感あふれるソーセージ」の開発が実現しました。
鬼や福ふく「鬼の宝ポーク」。
奥深い雪の中から生まれる、幻の豚。
初めまして。
フードテックカンパニーEco-Porkで養豚場の経営効率化やブランドづくりを担当している沼澤と申します。
全国に80あるお客様(生産者)とそこで育てられる豚に接する毎日。
私は、そのような日々のなかで「こだわりを持って美味しい豚肉を精算している生産者の魅力を、皆さまに伝えていきたい」「豚肉を食べる文化を盛り上げたい」と感じていました。
2023年4月。Eco-Porkは豚肉の販売を開始することになりました。
「食肉文化を次世代に繋ぐ」取り組みの新しいステップです。
ただ豚肉を販売するのではなく、最高の豚肉で、驚きとワクワク、肉そのものの味わいを実感できる、これまで食べたことのない「何か」を創造し、世の中に広めたい。こうして、私の取り組みは始まりました。
「鬼や福ふく」の物語
「鬼や福ふく」は、南魚沼の南西部に位置する津南町で20代にわたり農業に勤しんできました。50年前から養豚業を始め、そこで生まれた有機堆肥を使って、良質な高原野菜の生産にも取り組んでいます。
鬼や福ふくのブランド「鬼の宝ポーク」は、赤身に適度にサシが入って歯触りが良く、旨味が濃厚で脂身は上質。肉質はしっかりとしていて、香りと豊かな甘みが特徴です。
2023年1月、記録的な大雪のなかで訪問した私たちに、鬼や福ふく島田社長は言いました。
「美味い豚肉は、脂が美味い。私たちは濃厚な香りと味わいの、しっかりと脂が乗った昔ながらの豚肉を生産しています」
フリーストールや循環型農業による有機堆肥など、環境にも、食の安全性にも配慮している、熱い志を持つ生産者です。
「うちは、豚が伸び伸びと健やかに育ってほしいと、とにかくそれを最優先に飼育している。私、豚がね、大好きなんですよ」
「なるべくストレスのないようにって、そうやって飼っていたら、結果的に濃厚で旨味溢れる肉質になりました。とくに、甘みの強い脂はぜひ味わってみて欲しい」
効率よりも愛情を優先。
「飼育されている豚たちには、心地よく過ごしてもらいたい、人生(豚生?)を謳歌してもらいたい」という想いで、2009年にオランダからフリーストールを導入しました。自由に動き回るフリーストール飼いは、1頭1頭の管理がしにくくなります。しかし、たとえ非効率でも元気に生き生きと育ってほしい。」
そう語る島田社長は柔和な表情ながら、眼鏡の奥の眼からは強い決意と、限りない豚への愛情が滲み出ていました。
豚たちは好きな時に餌を食べ、自由に動き回り、寝たい時に寝る。そんな1500頭の豚たちを、島田社長とスタッフ藤井さんの2名で、すべて面倒を見ています。
鬼や福ふくについてはこちらをご覧ください。
圧倒的な旨味。とろける脂。
「こんなにジューシーな豚肉、初めてだ」
島田社長からいただいて新潟から持ち帰った「鬼の宝ポーク」が、あまりに美味しかったのです。一緒に試食したメンバーが、皆、口々に絶賛します。
「バラは脂の甘さとジューシー感、すごく濃厚でパンチがある。」
「ロースはしっとりした弾力が面白い!最初あっさりなのに、噛めば噛むほど味わいが溢れてでくる」
「共通して言えるのは、野生味があって『いま肉食べてるなー。生きてるなー』って感じます」
私たちは最高の豚肉で、これまで食べたことのない「何か」を創造したいと考えています。
まず、「最高の豚肉」が見つかりました。
出会いは突然に。
ドイツ人職人、トビアス バルドゥーン。
そのような「何か」を探し続け、パートナーを探すこと数ヶ月。同僚と偶然訪れた、勝どき「太陽のマルシェ」。会場内に充満するソーセージの香り、それを頬張るお客さんたちの満足した笑顔。そこにはドイツソーセージを販売するバルドゥーンのキッチンカーがありました。
期待に胸を膨らませ、バルドゥーンさんから手渡された熱々のソーセージを食べた瞬間、「これだ・・!」衝撃を受けました。
粗めの挽肉がごろごろと残った食感に、お肉と香辛料の混ざったえもいわれぬ薫香。絶妙な塩味。ヨーロッパで感動した本場ソーセージ。
すぐにその場で連絡先を交換して、ソーセージ以外にもベーコンや生ハムにローストポークなどさまざまな製品を購入。今回のプロジェクトスタッフ全員で試食しました。食べて進めていくたびに、皆から笑いが込み上げてきます。
「ソーセージでなく、ステーキ級の肉実感がある」
「ボリューム感、食べごたえが凄い」
「肉汁が溢れ出て、スパイスの味わいとあいまって、食べるスープ」
これこそ、私たちが求めていた、驚きとワクワク、肉そのものの味わいを実感できる、これまで食べたことのない「何か」ではないか。
ドイツ伝統製法・完全無添加ですべて手作りするドイツ職人、「トビアス・バルドゥーン」のソーセージを皆に知って欲しい。
その日のうちにトビアスさんにコンタクト。
「肉の美味しさ・食べる喜びの価値を尊重し、本当に美味しい豚肉をいただく食文化を次世代へつなげていきたい」
そのために、バルドゥーンさんとぜひ一緒に取り組んでいきたい、お伝えしました。
まずは鬼や福ふくの「鬼の宝ポーク」のお肉をお送りして検討いただく事になりました。
想像を超えたソーセージができあがった
鬼や福ふくの豚肉を見たトビアスさんから連絡がありました。
「素晴らしいお肉です。旨味と香りが強く個性的。きっと良いソーセージになる」
「ぜひ一緒に、ソーセージを作っていきたい」
数週間後、2種類のソーセージが出来上がったという連絡が。横浜市鶴見区の工房にお邪魔して、さっそくいただきます。
まず、肉の旨味がすごい。以前食べたバルドゥーンのソーセージも美味しかったのですが、こちらのほうがパンチ力が3倍はありそう。
噛むほどに広がるスパイスの味わいとともに旨味エキスが口中に広がります。
「鬼や福ふくのお肉は、滋味深く香り高いのが特徴。合わせるスパイスが分かってきたので、もっと美味しいソーセージが作れます」
そう断言するトビアスさん。
そしてさらに何回かの試行錯誤を経て、当プロジェクトのために4種類のソーセージとベーコン、ポークチョップが出来上がりました。
いずれも添加物は使用せず、豚肉、塩、ハーブやスパイスのみで作られています。試作第一弾では、バルドゥーンさんの通常レシピどおり背脂を使用しましたが、完成版では不使用に。「鬼の宝ポーク」は背脂に頼らなくても十分に旨味たっぷりだったことや、「お肉らしさ」をより感じられる、厳選素材だけで作られるソーセージを目指したかったことが理由です。
4種類のオリジナルソーセージのご紹介
CAMPFIREでは、実施わずか3週間で131%のご支援を頂きました
皆さまにお届けするソーセージは、挽肉にスパイス類を混ぜたら腸詰にして、ドイツ製専用機材によってすぐにスチーム加熱します。設定温度に達したら急速冷却して、真空パック。美味しさを閉じ込めます。
お肉の味をしっかりと味わってもらいたい、その考えから燻製はしていません。
トビアスさん曰く、ドイツでは燻製しないソーセージも多いとのこと。今回は4種類のソーセージの違いを楽しんでいただくために、ノンスモークで仕上げました。