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Project 02 鬼や福ふく×Eco-Pork

魚沼津南町の雪深い山奥から生まれた「幻の豚肉」、 初の全国展開。

豚の肉質を決めるのは「餌」「水」「環境」と言います。

今回ご紹介する「鬼の宝ポーク」は、餌には米菓などを自家配合、ミネラル豊富で清らかな魚沼の雪解け水、そして緑あふれる里山の澄みきった空気や、昼夜の寒暖差。

この絶妙なバランスのなかで生まれる豚は、他では味わえない未来に残したいお肉です。


その初めての全国展開について、背景とこだわりをお届けします。

鬼や福ふく20代目 島田福徳氏
唯一のスタッフである藤井さんは畜産専門学校の卒業生

後継者不足、人手不足、飼料高騰などの要因による養豚場の経営難。畜産業において排出されるCO2。水や飼料の大量消費。

こうした養豚業における経営環境や高い環境負荷を背景として、本物のお肉から培養肉や代替肉への移行が注目を集めています。

リアルなお肉はいずれマイナーな存在に・・?

「本物の肉の美味しさ・食べる喜びの価値を尊重し、本当に美味しい豚肉をいただく食文化を次世代へ繋げていきたい」

私たちはこの思いで約6年間、養豚農家に対するDXソリューション提供を進めてきました。

そして2023年4月。

「全国各地の養豚農家とお客様をダイレクトに繋ぎ、その価値を伝え、そこで生産される肉の美味しさをという価値を高め、お客様にお届けする」

という取り組みに、挑戦します。

鬼や福ふくは夏には「鬼もろこし」を生産する

美味しさの可視化、養豚の未来。

はじめまして。Eco-Porkの和田と申します。

2022年12月、豚枝肉取引規格が26年ぶりに改正され、出荷時の適正重量が時代にあったものに更新されるとともに、「美味しさの目安と言われるオレイン酸の測定を、個別の農場・豚ごとに実施していく」というニュースが飛び込んできました。

豚肉の美味しさの可視化は、消費者にとってはもちろん、生産者にとっても大きなチャンス。ブランド力向上に繋がる可能性があります。

Eco-Porkは従来の養豚DX事業に加えて「一般のお客様に向け日本各地の美味しい豚肉をお届けする」プロジェクトが始動しました。

お取引のある全国約80もの農場のなかから、真っ先に白羽の矢が立ったのが「鬼や福ふく」でした。一般小売をほとんどされておらず、そのブランド名はあまり知られていないものの、しっかりとした養豚や環境への取り組みをされている養豚農家です。

1500頭の豚を大切に育てる二人

大寒波到来。鬼の話、豚の話。

2023年1月。

Eco-Porkスタッフが「鬼や福ふく」を訪問しました。

所在地は新潟県の魚沼。

おりしも大寒波が到来。越後湯沢駅からの在来線はすべて運休しており、スタッドレスタイヤの慣れないレンタカーで、時おり吹雪に見舞われながら山道を向かうこと数時間。

なぜ「鬼」なのか。昔(そして現在も)農場でとうもろこしを生産していたところ、一晩で一畑が熊に食べ荒らされる事があり、どうしたものかと悩み、導き出されたのが「鬼もろこし」と言う名前。熊よりも勇ましい名前を付ければ熊が怖がってより付かなくなるのではないかと考えた、先代の社長が命名したとのこと。

そして農場で育てられる豚にも「鬼の宝ポーク」の名称をつけられたとか。

「鬼の宝」って良い名前の豚だな、などと思いを巡らせる道中。

大雪のなか出迎えてくれた島田社長

そして、大雪の中、「鬼や福ふく」の豚舎が見えてきました。私たちを温かく出迎えてくれたのは、島田社長。

ご案内いただいた豚舎は、環境、餌、衛生管理、こだわりと豚への愛がたっぷりと詰まっていました。

隅々まで清掃が行き届いた子豚舎

効率よりも愛情を優先。

「飼育されている豚たちには、心地よく過ごしてもらいたい、人生(豚生?)を謳歌してもらいたいという想いで、2009年にオランダからフリーストールを導入しました。自由に動き回るフリーストール飼いは、1頭1頭の管理がしにくくなります。しかし、たとえ非効率でも元気に生き生きと育ってほしい。ストレスのない環境で育てば、お肉もより美味しくなるに違いない

そう語る島田社長は柔和な表情ながら、眼鏡の奥の眼からは強い決意と、限りない豚への愛情が滲み出ていました。

大きく立派に育った母豚たち

私たちは驚きました。「いくつもの養豚場を見てきましたが、鬼や福ふくで飼われる母豚は1-2割大きいですね」

島田社長が嬉しそうに答えます。「柵がないぶん、豚たちは好きなように動き回り、好きな時に餌を食べて、寝たい時に寝る。ストレスが無いから、大きく、健康に育っています」。

飼われている豚は約1500頭。島田社長とスタッフ藤井さんの2名で、すべての面倒を見ています。毎日同じように巡回し、同じように餌を与え、同じように健康をチェックする。気の遠くなるような繰り返しが、この豚と人との信頼関係を生んでいるに違いありません。

広々とした豚舎で自由に動き回る子豚たち
日齢によって複数の飼料を使い分けています

「いただきます」へ込めた思い。循環型農業と自然への感謝。

鬼や福ふくは長年、お米の収穫栽培を生業に代々続いてきた農家です。そんななか、四季を通して循環的に生産していく方法はないかと考えられたのが養豚でした。

養豚によって出る堆肥を活用すれば、休耕期間を設けることなく一年中農業ができる。こうして現会長である島田福一さんが1973年に、島田農園という屋号で畜産を始めました。

そして、20代目の島田福徳社長が2019年に「鬼や福ふく」として法人化。2020年には当社の養豚管理支援システム「Porker」を採用いただきました。一頭一頭の体格や健康管理などを的確に行い、安心安全で美味しい「鬼の宝ポーク」を作っています。

朝一番からまずは豚舎を見回ります

島田社長は養豚で出る堆肥で、「鬼もろこし」という甘みいっぱいのコーンを生み出しました。ほかにも「鬼の宝にんにく」や「魚沼産コシヒカリ」など、循環型農業に取り組んでいます。豚を本来あるべき姿でのびのびと育て、自然の摂理にそって恵みを大地へ還し、新たな作物を生み出していく。

「いただきます」にも通じる、自然への畏敬の念をもって、取り組んでいます。

養豚から出る堆肥で育つ、鬼もろこし
鬼もろこしやにんにくの収穫時期には、仲間たちがお手伝い

島田社長は話します。

「これからも未来永劫、養豚を続けていきたい。いまの子どもたちが大人になった時にも、美味しい豚肉を食べられる環境や食肉の文化を残していきたい

圧倒的な旨味。とろける脂。

「こんなにジューシーな豚肉、初めてだ。」

島田社長からいただいて新潟から持ち帰った「鬼の宝ポーク」が、あまりに美味しかったのです。一緒に試食したメンバーが、皆、口々に絶賛します。

「鬼の宝ポーク」ロース肉。赤身部分にも綺麗なサシが入ります
「鬼の宝ポーク」バラ。脂身が多すぎず、赤身とのバランスが良い。

いただいたのは、バラとロースの2種類。

「バラは脂の甘さとジューシー感。すごく濃厚でパンチがある。しかも、溶ける」

「ロースはしっとりした歯応え。最初あっさりなのに、噛めば噛むほど肉の味わいが溢れてでくる」

「共通して言えるのは、野生味があって『いま肉食べてる。生きてる』実感がある」

島田社長いわく「美味い豚肉は、脂が美味い。私たちは濃厚な香りと味わいの、しっかりと脂が乗った昔ながらの豚肉を生産しています」「さっぱりと綺麗で食べやすい豚肉しか知らない人たちに、ぜひ私たちのお肉を食べてほしい

まさにそのとおりの味わいでした。

私は試食会のその日のうちに、島田社長にお礼の電話をしました。そして「鬼の宝ポーク」が本当に美味しかったこと、私たちのプロジェクトを通じて販売させていただきたいということをお伝えしました。島田社長は快諾してくれました。

「Eco-Porkさんの、豚肉を未来に残していきたいという気持ちはよく分かりました。私たちも同じ気持ちです。ぜひ、よろしくお願いします」

こうして、日本全国からお届けする豚肉の第1弾は、鬼や福ふく「鬼の宝ポーク」に決まりました。

と畜、加工、流通。豚肉が届くまで。

そこからが苦労の連続でした。こんなに美味しい豚肉だから、最高の状態でお届けしたい。私はさまざまな業者と連絡をとり、実際に足を運び、パートナーの選定を進めました。

私たちのコンセプトは「Join Our Farm.」です。

食肉文化を次世代に繋ぐために、関わる皆がFarm Memberです。

と畜場、加工業者、倉庫など、すべて自身で足を運び、決定しました。

特に精肉については、フードディレクター田村浩二シェフのアドバイスから、1mmの極薄しゃぶしゃぶ肉を提供できるようにしました。同じロース肉でも、1.5mmと1mmでは全くの別物。豚しゃぶにしたときにフワッと溶けるような食感は、ぜひ皆さまに味わっていただきたいです。

1mmだと湯につけすぎないのがポイント。出し汁をしっかり煮立てて、約4秒が最適な味わいです(お好みもありますが)。

とろける脂、溢れる旨味

「鬼の宝ポークは、なんといっても脂が美味い。バラとロースをしゃぶしゃぶで食べると、違いがはっきり分かります。食べ比べが面白いですね」

これはEco-Porkフードディレクター田村浩二氏のコメントです。

ロースでも、赤身部分に綺麗にサシが入っています

「鬼の宝ポーク」を、成分検査にかけました。

一般的な三元豚に比べて脂の融点が低いと示されています。そのため調理したときに脂が溶けて肉全体を包んだり、口に含んだときの脂身の食感が旨味に繋がっているように感じます。

「しっかりと脂が乗った昔ながらの豚肉」という島田社長の言葉どおりの評価となりました。

存在を主張する力強い肉。

3月の試食会。「鬼の宝ポーク」の力強さを味わうためのレシピを検討し、その実食をおこないました。選んだのは「回鍋肉」「豚丼」

回鍋肉はご存じのとおり豆板醤や甜麺醤とラー油など、刺激的な調味料がたくさん使われています。

あっさりした豚肉だと調味料の味ばかりが目立ってしまうことがありますが、鬼の宝ポークは違いました。

甘辛い回鍋肉のタレが、鬼の宝ポークの力強い旨味をさらに引き出して、強烈なパンチ力。ブロックからスライスした極厚バラ肉は、噛めば噛むほど肉汁が。

(このあと、豚丼食べるのに)ご飯がすすみます。

回鍋肉の興奮状態のまま、続いては豚丼です。

醤油、味醂、酒などオーソドックスなバランスの中で、少し多めの生姜ときび砂糖。これによって、刺激と甘さのある味わいに仕上げました。(レシピはこちら

まずはお肉からいただきます。

刺激的な回鍋肉とは変わって、こちらはふくよかで溌剌とした味わい。先ほどよりも、鬼の宝ポークの旨味が前面に出てきます。

バラ薄切り肉ならではのとろけるような甘みある脂。そしてサイコロ状のバラ肉は噛み締めると溢れる肉汁。結局私は、合わせてお椀3杯のご飯を平らげてしまいました。

「こんなに食べたの、いつぶりでしょうね!」

そう言いながらスタッフ同士で笑い合いました。やはり、美味しいお肉には、人を笑顔にする力があります。

鬼や福ふく「鬼の宝ポーク」は、力強く滋味あふれる味わいが特徴シンプルな味付けで肉本来の旨味を楽しむもよし、しっかりした味付けで肉のポテンシャルを引き出し、ひとつ上のレベルの料理に仕上げるのもよし。それだけ楽しめる、豚肉です。

安全で安心、環境にも配慮された豚肉をお届け。「Eco-Pork認証」

私たちEco-Porkは豚肉を扱うにあたって、「安全で安心できる、環境にも配慮された豚肉をお届けしていきたい」という考えに基づき、「安全・安心・低環境負荷」を保証する独自制度「Eco-Pork認証」を定めています。

以下の8項目のうち6項目以上をクリアする養豚場を対象としています。もちろん鬼や福ふくは、8項目すべてをクリアしています。

1:飼育状況がデータで管理されていること。
2:HACCP(ハサップ)、もしくはそれに準じた衛生管理が行われていること。
3:豚舎の温湿度やCO2をコントロールして健康管理をしていること。
4:極度に密集させず、のびのびと育てていること。
5:獣医師と連携して健康管理を行っていること。
6:堆肥を有効活用していること。
7:国内飼料、またはエコフィード(食品ロス等)を活用していること。
8:アニマルウェルフェア(動物の尊厳を重んじた飼育)に取り組んでいること。

当社システム「Porker」で使用状況を確認する島田社長と藤井さん

いつ生まれて、どんな餌をどれくらい食べて、いつ出荷されたか。すべてデータ管理されて、そのうえで健やかにすくすくと、愛情たっぷり育てられています。

豚たちには広々としたスペースが与えられています
一頭一頭の背脂肪厚をチェック
余剰米菓などを混ぜた餌は、環境のためだけではなく、豚肉の味わいにも好影響なのだとか

Join Our Farm. 日本全国の美味しい豚肉を、食べて応援。

私たちは豚肉の魅力・課題・未来をすべて皆さまに発信しながら、「食肉文化を次世代に繋いでいく」という取り組みを社会課題として皆で共有し、ともに向き合っていきたいと考えています。

「鬼の宝ポーク」を召し上がってみてください。しっかりとした肉の味わいと豊かな脂身と甘味を感じられる豚肉です。そしてその裏側には、機能性、環境への配慮、養豚の持続可能性、生産者のこだわりなど、さまざまな想いが詰まっています。

島田社長の言葉を改めて。

「美味い豚肉は、脂が美味い。私たちは濃厚な香りと味わいの、しっかりと脂が乗った昔ながらの豚肉を生産しています」

「さっぱりと綺麗で食べやすい豚肉しか知らない人たちに、ぜひ私たちのお肉を食べてほしい」

この「鬼の宝ポーク」でドイツ人トビアス・バルドゥーン氏がつくりあげた完全無添加・伝統製法のシャルキュトリもおすすめです。

鬼や福ふくを、そして日本の養豚産業を、私たちと一緒に応援していただけると幸いです。

株式会社Eco-Pork 開発部 和田 勉